「切磋琢磨という言葉があるけれど……」「私はそんなレベルにもないのが現実」

「なんで受かったのか、未だによく分かりません。ただ、我々の時代は“まだ真っ白だから、『伸びしろ』があるかもしれない”という合格者もいたように思います。今のハイレベルな子ばかりの時代だったら、絶対受かっていませんよ(笑)」

 試験をクリアしたものの、入学したらいよいよ強者揃いだ。そんな環境に飛び込んで、焦りは感じなかったのだろうか。

「もちろん“追いつかなくちゃ”という意識がないわけじゃない。せっかく入れていただいたし、ちゃんと舞台に立てるようにならないと意味がないとは思いました。ただ、周りの能力が高すぎて、『競争』からは蚊帳の外。切磋琢磨という言葉があるけれど、それは力がある人たち同士だから成立する話で、私はそんなレベルにもないのが現実でしたから」

 劣等感はあったが、自分を卑下することもなく、開き直るわけでもない。そのしなやかな強さが剣さんの持ち味だが、「すんごいカッコ悪いですよ、私」と身を縮める。

「私は昔からあまり競争心がないタイプで、どちらかと言えば、自分の中でひとつずつ何かをクリアしていくのが好きだったんです。どうせ誰も私のことなんて見ちゃいないし、存在すら“無”になるほどの出来なさなので、劣等感はあって当たり前。
 もし、私が他人と競うことばかり考えていたら、早々に逃げていたかもしれない。『できることが増えていく』という自己満足でいいし、他人と比較するものじゃないんですよね」

剣幸 撮影/河村正和