パントマイムをやっている女の子と出会い、それが演劇との接点になりました

 そんなとき、ビルの清掃のアルバイトをしていて、パントマイムをやっている女の子と出会いました。それが演劇との接点になりました。面白いなと思ったんだけど、しゃべらないのはつまんない。「じゃあしゃべるし体を動かすものは?」ということで演劇に行ったんです。そして演劇学校で、長く演出家として付き合った森田雄三と出会いました。そこから一人芝居というものを始めることへとつながっていったんです。 最初は一人芸人みたいなことをやってみたんですが、すぐにこっちじゃないと感じました。それで、オールバックにして、黒鉛筆でちょこちょこっと髭を書いて出ていったら、「あれ、誰?」となった。「バーテンの人らしいぞ」と。僕の一人芝居の原点と言ってもいい、 「バーテン」ネタの誕生です。

 やっぱりあれが大きかったのかなと。「見た目で別人になる」ということ。気持ちの問題じゃなくて、見た目で別人になれる。一人芝居というのは、自分だけが出ていくわけです。でもそこで“自分が”出るとなるとすごく恥ずかしい。だけどバーテンだったら違う。「これは俺じゃない、バーテンだ」と思えると、恥ずかしいことは何もない。その発見が出発点でした。それはスポーツだったりのパフォーマンスでは味わえなかったことです。それだと自分自身ですから。

イッセー尾形(いっせー・おがた)
1952年生まれ、福岡県出身。1971年に演劇活動を始め、1980年代から独自のスタイルで“一人芝居”を確立。2016年、映画『沈黙‐サイレンス‐』(マーティン・スコセッシ監督)で第42回ロサンゼルス映画批評家協会賞助演男優賞次点を受賞。主な出演作に、映画『ヤンヤン 夏の想い出』(00/エドワード・ヤン監督)、『トニー滝谷』(04/市川準監督)、『太陽』(05/アレクサンドル・ソクーロフ監督)、『泣き虫しょったんの奇跡』(18/豊田利晃監督)、『ONODA 一万夜を越えて』(21/アルチュール・アラリ監督)、ドラマ「宙わたる教室」(24/NHK)など。

映画『メモリィズ』
新宿ピカデリー他 公開中
(c)2026 Little More
配給:リトルモア
監督・脚本:坂西未郁
出演:柄本佑 穂志もえか 梅沢昌代 伊佐川ひろ子 成田裕介 占部房子 香椎由宇 イッセー尾形
公式サイト:https://memorizu.jp