ドラマチックなことは何も起きない。ただ日々が積み重なっていく
今度の映画『メモリィズ』では、主人公の義父を演じています。九州の田舎町で写真館を営んでいて、足を骨折したことで、娘婿に来てもらって身の回りの世話をしてもらうんです。ドラマチックなことは何も起きない。ただ日々が積み重なっていく。そういう映画です。
坂西未郁監督はこれが長編デビュー作なんですが、普通じゃない力を持っていると思いました。例えば、主人公が義父の家にやってきた瞬間が描かれていない。3日目から始まる。僕らの世代からすると、「出会って、ガチンコで勝負する、そこがドラマだろう」と思うわけです。でも坂西さんはそこをあえて描かない。最初は不可解でした。
できあがった映画を観て初めて気がついたことがあって。僕はずっと、誰それではなく「この時代に生きている人間を演じている」というつもりでやってきました。職業によって人は違うとか、形があるから中身があるとか、そういう唯物論に近い感覚でね。この映画も、スマホとしか会話しない、生身の人間と向き合うことに慣れていない“時代”の話でしょう。そこで義理の父親と娘婿が、いやおうなく面と向かう。そこでどうするか……。
とにかく僕らは時代からは逃げられないんです。そこで楽しむしかない。楽しみを見つけて、希望を見つけて。その辺が、僕自身のテーマと重なっている気がしましたね。
イッセー尾形(いっせー・おがた)
1952年生まれ、福岡県出身。1971年に演劇活動を始め、1980年代から独自のスタイルで“一人芝居”を確立。2016年、映画『沈黙‐サイレンス‐』(マーティン・スコセッシ監督)で第42回ロサンゼルス映画批評家協会賞助演男優賞次点を受賞。主な出演作に、映画『ヤンヤン 夏の想い出』(00/エドワード・ヤン監督)、『トニー滝谷』(04/市川準監督)、『太陽』(05/アレクサンドル・ソクーロフ監督)、『泣き虫しょったんの奇跡』(18/豊田利晃監督)、『ONODA 一万夜を越えて』(21/アルチュール・アラリ監督)、ドラマ「宙わたる教室」(24/NHK)など。
映画『メモリィズ』
新宿ピカデリー他 公開中
(c)2026 Little More
配給:リトルモア
監督・脚本:坂西未郁
出演:柄本佑 穂志もえか 梅沢昌代 伊佐川ひろ子 成田裕介 占部房子 香椎由宇 イッセー尾形
公式サイト:https://memorizu.jp