執筆のきっかけになったのは大ヒット映画『国宝』
青インクのフリクションを、カートリッジも含めて100本以上使って書いたのが、小説『祇園の秘密 血のすり替え』だ。
「60歳を迎えたころから、私が母と過ごしてきた中で見聞きしたことを小説という形で本にしたいという気持ちが芽生えていました。そして今回『お母様が亡くなった年齢と同じ、65歳で小説を出版しましょう』とお声がけいただいたんですけれど、いきなり長編を書くのは無理だわ……と、二の足を踏んでいたんです」
背中を押してくれたのは、昨年6月に公開された大ヒット映画『国宝』だった。
「やっぱり伝統芸能の世界っていいなぁ……と感動しました。そして、子どもの頃、わが家には歌舞伎俳優の方々がよく遊びにいらしていたことを思い出したんです。母は祇園の舞妓ちゃんや芸妓さんをうちに呼んだり、私が20歳になるとお茶屋さんに連れて行ってくれたりしたんですね。歌舞伎と祇園、私が知っているふたつの世界を舞台にしたら、おもしろい物語が書けるんじゃないかしらと思ったんです」