涙ながらに振り返る恩人への思い
自信のなさを正直に明かしたところ、返ってきたのは──。
「会長からは、“何だってできるし、失敗したっていいんだから何でもやりなさい”“宝塚でトップに選ばれて、それをやりきったことが素晴らしいことなんだから。新しい世界に飛び込むのは怖いかもしれないけど、まだ30代なんだから大丈夫”と言っていただいて……。その言葉で“もう一度頑張ってみよう”と思えたんです」
「今でも立ち止まりそうになった時に会長の言葉を思い出します」と語る珠城さん。会長はまさに“恩人”だった。
「先輩方って何歳になってもパワフルで、一昨年共演した戸田恵子さんも、お休みがとれたらジムでトレーニングされたり、すぐ海外に行くそうです。私もそんな風に、アクティブで前向きに年を重ねていきたいですし、会長はそう思えるきっかけをくれた最初の出会いでした」

珠城りょう 撮影/三浦龍司
川村氏との出会いで俳優業を続けることにした翌年、珠城さんは『マイファミリー』(TBS系)で連続ドラマ初出演。濱田岳さん演じる東堂樹生の妻・亜希役で、犯罪に走った樹生に巻き込まれて悲劇に見舞われてしまう、難しい役どころだった。
──退団後初めてのドラマ出演でしたが、舞台との表現の違いに戸惑いはありませんでしたか。
「舞台は様式美の世界ですから、劇場のサイズに合わせて表現を誇張したり、客席からどう見えるかを計算したりすることが必要でした。でも映像は、ただそこに人間として存在し、会話している瞬間を切り取っていただくので、自分でも思っていなかったリアルな感情が湧いてきました」
──具体的にはどのシーンですか?
「最終話で濱田岳さんと対峙した、拘置所のシーンです。岳さんの眼差しや空気感に引き出されて、自分は“東堂亜希”ではないはずなのに涙が止まらなくなってしまいました。あんな経験はなかなかできないと思いますし、今思い出しても心が震えます。濱田さんとは今でもまたいつか作品でご一緒したいと思っていますね」