「私は声のプロではないので…」「100%の自信を持てないこともありました」
「野原一家も妖怪も、最初は相手に対する“思い込み”があって。それがだんだん、お互いのことを知るうちに打ち解けていく姿が全編を通して描かれます。今の時代って、よく知らないまま憶測で物事を決めつけてしまったり、怖がっちゃったりすることが結構あると思うんですが、本当は、ちゃんと知っていけば『意外と思ってたのと違った』って、見え方が変わることも多いはず。
この映画は、子どもだったらピュアに『そういう考え方があるんだ』『そういう人がいるんだ』って思えるし、大人が見たら、“相手と向き合うこと”“相手を知ってみることの大切さ”を思い出させてくれる作品です。私も今の自分に必要なものを、作中の何気ない会話のひとつつひとつからいっぱい受け取りました」
やこは見た目は小さな少女だが、中身は500歳という難しい役どころ。伊藤さんはテレビアニメ『映像研には手を出すな!』(2020)の主演・浅草みどり役をはじめ、劇場アニメ『すずめの戸締り』(2022)の声優を務めたほか、吹き替えでは映画『ペット2』(2019)、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(2022)など声の仕事も多くこなしてきたが、その経験をもってしても、今作はこれまでにない悩みがあったという。
「やこちゃんは妖怪なので、人間とは別のベクトルで役作りをしなくちゃいけない。可愛い見た目と、500歳という中身と、どっちに寄せたらいいのか結構悩みました。私は声のプロではないので、キャラクター像とその声を構築することに対して、100%の自信を持てないこともありました」
こうした考えから、「今回は考えすぎずフラットな状態で現場に入りました」と明かした伊藤さんは、「監督やスタッフさんたちの『これだ!』というイメージを掴み、それに忠実に応えることだけを考えました」とも振り返る。それでも、現場ではトライアンドエラーを繰り返した。