いくつもの分岐点

 振り返ると、ここに至るまでの長い道のりで、いくつもの分岐点がありました。最初は12歳で芸能活動を開始したとき。僕ら少年隊は『仮面舞踏会』(1985年)でレコードデビューする前から米国へ行き、マイケル・ジャクソンの『スリラー』を手がけた振付師など、複数の先生からダンスを習い、時間をかけてスキルを身に付けていったんです。1986年からは23年間、東京の青山劇場でミュージカルシリーズ『PLAYZONE(プレゾン)』に少年隊として主演。毎年夏のいい時期にライフワークとなる活動ができたことに今も感謝しています。

 2つ目の分岐点は23歳。グループを離れて事務所の制作ではないミュージカル『ゴールデン・ボーイ』(88年)に出演したときです。当時は僕のような歌い手が舞台に出ることは稀で、歌番組の共演者からは「どうして舞台なんてやってるの?」って不思議がられましたが、外部の作品で尾藤イサオさんや西岡德馬さんなど演劇の先輩に出会えたことで、視野が広がったように思います。

 実を言うと、若い頃は映画俳優に憧れていましてね。高橋伴明監督の『獅子王たちの最后』(93年)に出演したこともありましたが、残念ながら映画の世界の扉は開かなかった。それだけに60代で映画を撮れることになったのは大きな歓びです。

 演劇とのご縁ができた僕は90年代以降、主に東宝の舞台で佐久間良子さん、浅丘ルリ子さん、浜木綿子さん、大地真央さんたちと共演。欧米の物語が多かったので、洋画などで西洋人の仕草を研究しました。「俺も先輩たちのような芝居ができるようになってきた」と勘違いしていた時期です(笑)。

錦織一清(にしきおり・かずきよ)
1965年、東京都生まれ。85年、少年隊として『仮面舞踏会』でデビュー。以後ヒットを連発する一方、俳優としても多くの作品に出演。現在は舞台演出家としても活躍する一方、パパイヤ鈴木とのユニット「FunkyDiamond18」など音楽活動も展開中。映画監督デビュー作『僕は瞳に恋してる』は2028年公開予定。

舞台『あゝ同期の桜』
(演出・出演:錦織一清)
2015年の初演以来、再演を重ねている、若き学徒兵たちの“帰らざる青春”の物語。錦織が「生涯を賭けて後世に伝えたい作品」と位置づけており、今年も東京・三越劇場(8月13日~17日)と木更津・かずさアカデミアホール(8月22日)で上演される。