『マトリックス』シリーズ『ハリー・ポッター』シリーズの配給を統括し、『るろうに剣心』『許されざる者』で製作総指揮を務めたワーナー元社長、ウィリアム・アイアトン。
 2393億円という空前の興行収入を叩き出した稀代のヒットメーカーが、その半生と映画ビジネスの深淵、そして世界基準の仕事術を綴った著書『日米映画の架け橋 ラストサムライ 2393億円の男』(双葉社)を上梓した。
 これからスタートするインタビューサイト『双葉社 THE CHANGE』のシリーズ連載では、日米のトップスターたちの知られざる素顔や、歴史的メガヒットを生み出したビジネスの熱狂を、彼の証言とともにひも解いていく。
 第1回は、クリント・イーストウッド監督が挑んだ異例の戦争映画『硫黄島からの手紙』。オーディション映像を見た巨匠は、一人の日本人青年の姿にくぎづけになった。「彼だ!」――なぜ、当時アイドルとして絶頂期にあった二宮和也が、世界的名匠の心を一瞬にして奪ったのか。公開から20年――肩書きや先入観を一切持たず「本物の才能」を見抜くイーストウッド監督の圧倒的な慧眼と、それに応えた二宮の素顔に迫る!

会見に臨む『硫黄島からの手紙』監督と出演者。左から中村獅童、伊原剛志、渡辺謙、クリント・イーストウッド、二宮和也、加瀬亮。
ワーナーエンターテイメントジャパン元社長のウィリアム・アイアトン氏。撮影/小島愛子

巨匠からの電話と、『硫黄島からの手紙』の始まり

 私の映画人生の中で、非常に印象深い作品の一つが『硫黄島からの手紙』(2006年公開)です。クリント・イーストウッド監督が、第二次世界大戦における激戦地・硫黄島を日本軍の視点から全編日本語で描くという、ハリウッドの常識からすれば異例の挑戦でした。

 すべての始まりは2005年、イーストウッド監督からの「日本の守備隊、特に栗林忠道中将について教えてほしい」という一本の電話でした。ハリウッドの巨匠が、かつての敵国の真実に真摯に向き合おうとしていることに、私は深く心を動かされました。 当時のハリウッドには、「全編日本語の戦争映画はアメリカでは当たらない」と懐疑的な声もありましたが、監督は「優れた演技や人間の感情に、言葉の壁はない」という強い信念を持っていました。