舞台の稽古に耐えられなくなった

 2006年に、NHKの大河ドラマ『功名が辻』に出演させてもらった頃からテレビの仕事もするようになってきました。そのうち2時間ドラマにも出るようになったんですが、最初の頃はフィルムだったので、撮り方も映画と同じ感じ。私も自由にお芝居させてもらっていました。そこでプロデューサーの水島総さんや、『OL日記 牝猫の匂い』(72年)といった日活ロマンポルノを多く撮っていた藤井克彦さんという監督に出会って、大きな影響を受けたんです。すごく怒られたこともあった。それまでの『四季・奈津子』や『マノン』の頃は、仕事という意識が薄かったから(笑)、怒られたのは初めてでしたね。台本の内容もオリジナルだったし、ここで芝居の何たるかということを学んだというか、面白さに気づいたんです。

 2014年には、『ジュリエット通り』で初めて舞台を踏むことになりました。演出の岩松了さんとは、好きな映画の話がメチャクチャ合ったから、「やっても良いかなぁ」と思っているうちに決まっちゃったんです。でも、舞台の稽古って1か月ぐらいあるし、ずっとその場にいなきゃいけない。そのうち、それに耐えられなくなってきたんです。毎日同じことの繰り返しで、その都度ものすごい緊張感があって。映画のように撮り直しもできないし、“生”だから、ものすごく苦しかった。「こんな所にいるくらいなら家に帰って自分のセリフ覚えたほうがいい」って思って、帽子を置いて稽古場から脱走したこともありました(笑)。岩松さんも「烏丸、どこ行った?」って探すんだけど、共演の風間杜夫君とかが「ちょっとトイレに行ってるみたいです」ってかばってくれたりして。それでも特に怒られることもなかった。でもそれは単純に岩松さんと仲が良かったからじゃないかな(笑)。

烏丸せつこ(からすま・せつこ)
1955年2月3日、滋賀県生まれ。A型。T156。1979年に芸能界デビュー後、CM、ドラマ、映画など幅広く活動。 映画『海潮音』(80)で女優としてスタートを切り、同時期に『四季・奈津子』(80)で映画初主演し注目を集める。 近年の主な出演作に、NHK連続テレビ小説『スカーレット』、映画『64-ロクヨン-』(16)、『TOO YOUNG TOO DIE! 若くして死ぬ』(16)、『祈りの幕が下りる時』(18)、『教誨師』(18)、『明日の食卓』(21)、『夕方のおともだち』(22)、『なん・なんだ』(22)、『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(24)などがある。 映画『四季・奈津子』で日本アカデミー賞主演女優賞、新人賞、ゴールデンアロー賞新人賞、映画『駅 STAITION』 (81)で日本アカデミー賞助演女優賞。

映画『八月の杜』
東京大空襲で記憶を失った文(烏丸)は慰霊大法要で訪れた際に宿泊したホテルの経営者・佳奈(菜葉菜)と出会ったことによって記憶を取り戻していく……。
監督:岩本崇穂
出演:烏丸せつこ/菜葉菜/上村侑/坂巻有紗/村田秀亮(とろサーモン)/白川和子
8月22日(土)より東京・新宿K’s cinemaほか
全国順次公開
配給:T-artist /ミカタ・エンタテインメント
(c)2026Hideko Takeshima