「“これこそ本当の愛だ!”と心から思える瞬間がありました」

――実際に沙苗を演じてみていかがでしたか? 

「最初、私は沙苗の愛を裁いてしまっていたところがありました。彼女の愛は本当の愛ではないんじゃないか、と。愛と勘違いしているだけなのではないかと。
 映画のなかで、沙苗と、沙苗が出所後にお見合いで結婚した健太(仲野太賀)の家の近所に住む足立さん(木竜麻生)がいますが、ちょっと、足立さんのような立場で見てしまっていたんです。
 でも、それでは沙苗を演じることができませんし、沙苗の愛に近づこうと思って試行錯誤したのちに、やっと同じ目線に立てたなと感じたとき、“これこそ本当の愛だ!”と心から思える瞬間がありました」

――沙苗の愛は本当だったと。

「それまではある種、彼女は狂気をはらんでいるように見えていたけれど、彼女と同じ場所に立ってみると、すごく正気だなと思えたんです。反対に、自分を狂気と見なす社会や世間のほうがおかしいんじゃないかと。視点の逆転が、自分の中で起きました。そうした経験は初めてでしたね」

 作品に出会い、CHANGEを経験した橋本さん。さらなる進化した姿を見せてくれることだろう。

はしもと・あい
1996年生まれ、熊本県出身。中島哲也監督の『告白』(10)に出演し注目を浴びる。続く吉田大八監督の『桐島、部活やめるってよ』(12)などで第36回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(13)で圧倒的な人気を獲得する。近年の主な出演作は、映画『PARKS パークス』(17)、『ここは退屈迎えに来て』(18)、『私をくいとめて』(20)、『ホリックxxxHOLiC』(22)など。『ザ・フラッシュ』(23)では実写吹き替え声優に初挑戦した。ドラマ出演はNHK大河ドラマ「青天を衝け」(21)、「家庭教師のトラコ」(22/NTV)、Netflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」(23)、「アナウンサーたちの戦争」「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」(23/NHK)など。公開待機作に『ハピネス』(5月17日公開)がある。10月には神奈川県民ホール開館50周年記念オペラ「ローエングリン」でエルザ役を務める。俳優・モデルの他、音楽活動や写真、コラム連載をもち幅広く活躍中。
ヘアメイク:ナライユミ
スタイリスト:清水奈緒美

●作品情報
映画『熱のあとに』
監督:山本英
脚本:イ・ナウォン
出演:橋本愛、仲野太賀、木竜麻生、坂井真紀、木野花、鳴海唯、水上恒司
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配給:ビターズ・エンド 
公開:2月2日(金)