盆栽は高齢男性の趣味のひとつ。そのイメージはもはや過去のもの。近年は若い世代や海外で“BONSAI”ムーブメントが起きている。なぜ、世界中で盆栽が求められるのか。33歳のときに日本盆栽作風展・内閣総理大臣賞を最年少で受賞し、史上最多5度の同賞受賞歴を持つ盆栽作家の鈴木伸二さんに、すぐに役立つ盆栽を楽しむためのイロハから、盆栽に関わる驚くばかりのエピソードの数々を語っていただいた。【第3回/全3回】
 日本盆栽作風展・内閣総理大臣賞を史上最年少で受賞し、海外セレブも多く顧客に持つ盆栽作家、鈴木伸二さん。伝統ある家業として代々受け継ぐ人も少なくないが、鈴木さんは過酷な運命によって盆栽へと引き寄せられた人だ。それが、人生最大の“THE CHANGE”だと語る。

鈴木伸二 撮影/有坂政晴

「僕の両親は、長野県菅平高原でホテルを経営していました。父は自然が大好きで、僕と一緒に野山を散歩しながら、いろいろな生きものを教えてくれました。そんなふうに一緒に歩きながら父と採取したリンドウは、いまも元気に花を咲かせてくれます。
 ですが父は、僕が10歳のときに亡くなり、母は、僕と妹を連れて長野市に出て、園芸店を開いたんです。母ひとりでは大変なので、店を手伝うようになりました。父方の祖母は106歳の長寿でしたが、おばあちゃんも草花が好きでしたから、盆栽に親しむ素地はあったのかもしれません」