「庭で作業しているおじいちゃんに声をかけた」それが師との出会いだった

「実は、菅平で育ったこともあってスキーがすごく好きで、いつかは選手になりたいと思ったこともありました。でもね、地元で開かれたワールドカップで、レベルの違いを見せつけられたんです。野球で言う、大谷(翔平)さんみたいなすごい人たちを見て、現実が分かったというか(笑)」

鈴木伸二 撮影/有坂政晴

「高校卒業後は、埼玉県のいわゆる大宮盆栽村で修行しました。卒業式の翌日、盆栽園に行き“こんにちは”って、庭で作業しているおじいちゃんに声をかけたんです。でも、答えてくれない。困ったなと思っていたら、屋敷の奥から若い男性が出てきました。あとから分かったんですが、庭に居たおじいちゃんが僕の師匠で、作業中に話をしない人だったんです。それだけ集中していたんですよね。
 当時、師匠は72歳。盆栽は春のことは春、夏には夏の別の学びがあるので、基本を覚えるのに3年かかります。その後の2年間で応用を学び、最後の1年はお礼奉公があるので計6年必要です。僕をしっかり見守り続ける責任は大きいと感じた師匠は、はじめ断りました。でも、僕の家の事情を鑑みて、最後の弟子として受け入れてくださいました。それがまぎれもなく僕の人生で、最重要の“THE CHANGE”です」