あだち充氏の特別講義に潜入! 「反射神経で描く」天性のセンスとトップランナーが共有する「妄想力」
この日の特別講師は、『タッチ』や『みゆき』、『H2』など数々の名作で知られる国民的漫画家・あだち充さんだ。自身の漫画について語るのが苦手というあだちさんに代わり、講義前半は元担当編集者であり“あだち漫画マニア”を自認する市原武法さんが進行した。市原さんがあだち漫画のキャラクター造形やコマ割りの手法を解説しつつも、「天性のセンスや経験が必要なため、決してマネしないほうがいい」と忠告するほど、その方法は独特で属人的だ。
後半の質疑応答で、あだちさんは「人がやっていないことをやって喜んでもらえるのがすごくうれしい」「けっこう反射神経で描いている」と塾生の質問に丁寧に答えていた。講義後、武論尊さんとあだちさんに話をうかがうと、トップランナー同士が共有する創作の秘密が見えてきた。
武論尊さんが「私たちのやり方は、徹底して妄想と空想で作っていく。若い女性の絵がうまいからって、そういう子と実際に付き合っているわけではないですからね」と冗談めかして語ると、あだちさんも「本当に、大事なのは妄想力ですよね」と笑って応じる。
現実の取材がキャラクターの自由を奪う? 「枠にとらわれるな」巨匠たちが鳴らすリアリティ追求への警鐘
さらに武論尊さんは、現代のクリエイターが陥りがちな「リアリティの追求」についても持論を展開する。
「取材して枠ができちゃうと、そこから出られなくなっちゃうんです。たとえば政治家を取材して、その資料から政治家を描くと、型にはまった政治家しか作れない。逆に取材しないほうが、スケールが大きくてかっこいい政治家を作れることが多いんです」
この考えに、あだちさんも深く同意した。
「いいかげんだったり、適当だったりする部分をいっぱい残したいんです。取材してガッチリ固めちゃうと、キャラクターの自由な動きがとれなくなっちゃうんですよね」
漫画に正解はない。超一流のクリエイターたちが「妄想で作っていいんだ」「枠にとらわれるな」と語り合う姿は、何者でもない塾生たちの肩の力を抜き、自由なスタイルを作っていくための強力な礎となっている。
つづく