「誰もあなたの嘘っぽい笑い顔なんて見たくない」恩師から投げかけられた衝撃的な言葉
石丸さち子氏は、演出家・蜷川幸雄氏の演出助手を経て独立した演出家で、当時は「ポリフォニック」という私塾を主宰して、俳優の育成に当たっていた。
「月曜から金曜は毎日13時から17時までみっちりお稽古があって、学校みたいな感じでしたね。あの場所に通い続けた時間は、わたしにとって、本当にかけがえのないものです」
女優を志してはいたものの、演技を本格的に学ぶのはこのときが初めてだった。稽古場でとりあえず、笑みを浮かべていたという彼女に、石丸氏は辛辣な言葉をぶつけたという。
「じっとわたしを見て『どうしてそんなにニコニコ笑ってるの?何が楽しくて笑ってるの?誰もあなたの嘘っぽい笑い顔なんて見たくない』と言われて、もうグサッですよ。『あなたみたいに、自分というものをちゃんと表現できない人間に、他人を演じることなんてできないよ』という言葉にものすごくショックを受けました」
なぜ、こんなにショックなんだろう? どうしてこんなにわたしは苦しいんだろう?何度も自分に問いかけて生まれた答えは「このままじゃダメだ」だった。
「演技と格闘していくうちに、自分にまとわりついていた重い鎧が、どんどん取れていく感覚がありました。凝り固まった考え方や、他人を羨む気持ちなんかが、剥がれ落ちていくのをはっきりと感じたんです。なんだか、すごく救われた気がしました。そのときに石丸先生からいただいた言葉は今も心に残っています」