真摯な姿勢が映画を「本物」にした
『硫黄島からの手紙』は、結果として日本国内で51億円という大ヒットを記録し、世界中で高く評価されました。 なぜ、アメリカ人が監督した全編日本語の映画が、これほどまでに多くの人々の心を打ったのか。その答えは、この「水」のエピソードに象徴されていると私は思っています。
映画というものは、単にカメラを回して役者にセリフをしゃべらせるだけのものではありません。そこに関わる人間たちが、どれほど歴史に対して誠実であるかという「姿勢」が、映像の端々から滲み出るものです。謙さんが見せた栗林中将への深い敬意と、それを静かに見守り、尊重したイーストウッド監督の器の大きさ。この二人の真摯な魂のぶつかり合いがあったからこそ、映画は観客の心に深く突き刺さる「本物」の作品になったのだと確信しています。