親に借金をしなかったらと思うと、ゾッとします

 当時、僕は20歳。自分でアルバイトした金で撮るんだという薄っぺらいプライドがあって、ジャズクラブのボーイやカラオケの店員をやったり、劇団に入っていたのでエキストラをやらせてもらったり。それで貯めた金で撮りきるつもりでした。

 しかし、280万円もの金額はとてもじゃないけど払えない。自主映画を手伝ってくれていたのが故・金子信雄さんの息子さんだったんですけど、彼の家で「もう闇金に行こうか」と相談していたら、お母様の丹阿弥谷津子さんが入ってこられて、「そんなことをしたら、ご両親に迷惑がかかる。こういうときに親に助けてもらわないで、いつ助けてもらうんだ」と叱責されました。

 その夜、両親が帰ってくるのを待ち構えて土下座しました。請求書を見た父は「えらい額やな」と。そして、「肩代わりするには条件がある。役者になれ」と言われたんです。選択の余地なしでした。

 当時、僕は小劇場に出ていて、そこに父が見に来ていたんですが、映画監督としては才能がないけれど役者としては何か持っている、と思ったらしいんですよね。それで、280万円の借金肩代わりの条件が、「役者になれ」になったと思います。でも、そのとき親に借金をしなかったらと思うと、ゾッとします。親の力なんか頼らないと言っていた自分が、いかに親の手の中でくるくる回っていたのか、分かりました。

髙嶋政伸(たかしま・まさのぶ)
1966年10月27日、東京都生まれ。俳優。父は俳優で司会者の高島忠夫、母は女優でタレントの寿美花代、兄は俳優の髙嶋政宏。1988年にNHKの連続テレビ小説『純ちゃんの応援歌』で俳優としてドラマデビュー。その後90年からTBSのドラマシリーズ『HOTEL』の赤川一平役で注目を集める。以後、ドラマや映画、舞台などで活躍し、人気を博す。私生活では2015年に結婚、17年に第1子、22年に第2子が誕生した。

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