やらないでできないと言うのは、ナシです
僕の役作りは、「やれることはすべてやる」というやり方です。
漫画家の役をやったときは、顔の輪郭の何とも言えない丸みがどうしても描けなくて、石ノ森先生のスタジオに3日間入らせてもらったこともありますし、魚屋の役では、8秒で魚を三枚におろすシーンがあって、板前さんと2週間、練習しました。それでもできなかった。だから監督に「無理です」とお伝えしました。やってみたうえでのお返事です。努力はした、ということです。
やらないでできないと言うのは、ナシです。やれるところまではやる。できないところは工夫しましょうと話す。そうやって、やれるところに集中すれば、きっと良いシーンになるはずです。
芝居は、ほとんどが「段取り」だと思っています。立っている人間が歩いて、セリフを言って、椅子に座る。照明も録音も、そこに合わせていく。99パーセントが段取り。アクションだって殺陣師さんがついているし、危ないところはスタントマンさんがやってくださいますから。
それができるのに、なぜ性的なシーンになるとできなくなるのか。そんな疑問は常々持っていました。2023年、NHKの『大奥Season2』では、インティマシーコーディネーター(IC)さんをつけてもらう条件で徳川家慶役を受けました。NHKさんも「そのつもりです」とのお答えでした。
ただ最初のICの浅田智穂さんとの打ち合わせでは、なんとなく壁があるような感じがしたので、過去に煙たがられた経験があるのか伺うと、「ある」と。これはいけない、と思い、何かに書き残そうと思ったのが、「インティマシーコーディネーター」のエッセイです。