現地でさらにハマり…

稲田「自分が日本の店で食べて再現したカレーが正しいのか、答え合わせをしたかったんですよ。それで現地で食べてみたら、自分が独学で作ってきたものが、間違っていなかったんですよ。これでスッキリするかと思いきやですね、行ったら行ったで、まだ知らないことがいっぱいあるわけですよ。こんな食材使うの? こんなパターンの料理があるの? みたいな感じで。逆にどハマりして帰ることになってしまいました」

 しかし、それでもあくまで個人の趣味で、店でやるわけにはいかない。考えた稲田さんはあるゲリラ的なイベントを思いつく。

稲田「岐阜市内に、あんまり流行っていないうちの店があったんです。どうせお客さんが入らないんだったらって、月イチぐらいでミールスとかビリヤニを出すイベントを始めたんです。そうしたら、当時、南インド料理マニアの人たちは、数こそ少なかったんですけど、熱量が高い人が多かったんですね。いざやってみたら、東京や大阪から新幹線に乗って、イベントに来てくれたんですよ。これは驚きました」

 そのイベントは好評で何度か催されたという。食いしん坊の行動力はすごい!

稲田「そういう人たちは褒めるのも熱が入っていて、ぜひ東京で店をやってください、東京でもいけますよ、と言ってくれるんですよ。ただ、僕も一応プロなので、これで店は成り立たないとは思っていました」

 あくまでイベントとして留めていた南インド料理。しかし、これが後に「エリックサウス」として大ブレイクすることになろうとは、稲田さんも予想していなかったのである。

プロフィール
稲田俊輔(いなだしゅんすけ)
料理人・飲食店プロデューサー。鹿児島県生まれ。京都大学を卒業後、飲料メーカー勤務を経て、円相フードサービスの設立に参加。和食、ビストロ、インド料理など幅広いジャンルの飲食店を25店舗、展開。2011年には東京駅八重洲地下街に南インド料理店「エリックサウス」を開店し、日本のカレー業界を一変させた。ナチュラルボーン食いしん坊を自称し、著書も多数、手掛ける。近著は『ミニマル料理: 最小限の材料で最大のおいしさを手に入れる現代のレシピ85』(柴田書店)、『「エリックサウス」稲田俊輔のおいしい理由。インドカレーのきほん、完全レシピ』(世界文化社)、『食いしん坊のお悩み相談』(リトル・モア)

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