武田家のルーツは熊本県の山奥に…祖母が「鬼を見た」エピソードの真相

 偉人は偉人でも好きなタイプがあって、小さい頃はみんなから笑われてたのに、だんだん賢くなって偉人になっちゃうタイプの偉人が好きでした。

 西洋で見つけたのはエジソン。学校にはなじめていなかったけれど、実験が大好きでやがて発明王になる。その本で坂本龍馬も知りました。彼も成績不振者でしたが、剣道やったりしてるうちに変わっちゃって明治維新で大きな仕事をやる。

 まわりを最初はがっかりさせといて、だんだんあとで賢さを発揮するタイプ。好きな四文字熟語は「大器晩成」ってやつ。その手の偉人がむやみに好きでした。

 さらにこの頃、大発見をするんです。

武田家のルーツは熊本県の山奥の阿蘇谷。阿蘇の外輪山の中の小さな谷の村。そこで父母が食い詰めて福岡に出てきて生まれたのが私。そこに父方のばあちゃんも転がり込んできて一緒に暮らしていた。

 そのばあちゃんが、まだ子どもだった私に話すんですよ。「子どものときに鬼を見た」っていう話を。それがすごくリアルでさ。ばあちゃんが3つか4つぐらいの頃、雨が全然やまない梅雨どきに、突然「土蔵に逃げろ」って言われて土蔵に逃げ込んだ。

 そこで入口の扉を薄く開けて土蔵の外を見てたら、とんでもないものが見えた。雨の降るなかで、赤毛の鬼と白髪の鬼が松明を持って日本刀を振り回しながらこう叫ぶ。

「さつはおらんか!さつはおらんか!」

 その話が子ども心に怖くてね。ずっと忘れなかったんだけど、偉人伝を読むうちに、「さつはおらんか」の謎が解けたんですよ。

武田鉄矢 撮影/河村正和