文芸評論家として数多くの著書を発表、テレビやメディアで活躍の場を広げ、昨年は『NHK紅白歌合戦』の審査員を務めるなど、いま最も注目される文化人の1人である三宅香帆さん。7月17日に発売された最新刊『推したちとどう生きるか』(新潮新書)では、アイドルやVTuberなどを「推す」という行為を、歴史や社会、文化の変化から読み解いている。「推し」はなぜこれほど私たちの日常に入り込む存在になったのか。そして、好きなものと長く付き合っていくためには何が必要なのか。人生の転機とともに聞いた。【第1回/全3回】
今やすっかり日常に溶け込んだ「推し活」。三宅さん自身も、AKB48系列のグループや坂道グループなどを長年推し続けてきた一人で、最新刊『推したちとどう生きるか』では「推し」を「日常を一緒に生きる存在」と捉えている。
三宅香帆(以下同)「本書のスタートは、『考察する若者たち』(PHP新書・2025)の“萌えから推しへ”という章で推しについて取り上げたとき、『もう少し書きたいことがあるな』とテーマを深掘りし始めたことでした。
周囲で推し活をしている友達や大学で教えている子たちを見ていると、『日常の中でずっと推しのゲーム配信を聞いている』みたいなことを言ったりするんです。今はYouTubeやライブ配信があるから、推しとより一緒に日常を過ごすという感じになっているし、『推しが結婚して~』『離婚して~』と、まるで人生を一緒に過ごしているかのように話すんですよね。世間で言われているような、過激であったり課金競争であったりとは違う“推しの在り方”があるんじゃないかな、ということを書きたかったんです」
「推し」という言葉自体は以前から存在していたが、「推し活」という言葉が広く使われるようになったのはコロナ禍以降だと三宅さんは認識している。
「以前から『推し』という言葉はあって、AKBの『推しメン』という言い方から一般にも広がっていきました。でも『推し活』という言われ方をすごく見るようになったのはコロナ禍だったと思います。宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』(河出書房新社・2020)が芥川賞を受賞したこともありました。女性誌でも『推し』という言葉が使われ、そこからいわゆるオタク的な文脈ではないところでも見かけるようになりました」