「ガーンって、がんかもしれないことよりショックでした(笑)」

「とにかく絶対早めに行くように、「『がん』だと言えば予約もスムーズだから」という念押しでした。そこで初めて「えっ」と動揺しましたね。

 呆然としたまま自分を落ち着かせるために時間を取りたく、病院が入っている商業施設の中にある寿司屋に入りました。そしてとりあえずのビール。こんな時にビールかと思われるかもしれないけど、ビールを飲んでいる時が一番落ち着くんだから仕方ない(笑)

 現実逃避して心を落ち着かせた後、家に帰り妻に報告。そして紹介状にあった病院に電話したら、「明日はどうですか」って。急展開過ぎて、がんについて何か調べたり相談したりする暇もない。翌日、その病院に行ったら耳鼻咽喉科の先生が「ほぼがんです。一応病理検査に出しますけど、相当進んでます」って。そこから、怒涛の癌の説明が始まりました。

 耳鼻咽喉科の主治医は30代半ばぐらいの先生でした。一応手術したくない=声を失いたくない理由として、「僕はタレントで、見栄晴という芸名で……」と説明したら、「すいません、存じ上げなくて」ってさ。ガーンって、がんかもしれないことよりショックでした(笑)。

 そう、僕は声を失って仕事が出来なくなるのが怖かったんです。お袋はもう亡くなっているし、親父も小学生の時に逝っちゃってる。だからなのか、あちらでは親父やお袋が待っててくれんだろうなと思えるから、死はまるで怖くないんです。それよりも仕事を失った自分がどのように生きていくのかを想像できなかった。その1週間後に、ステージ4だってわかるんですけどね。

(つづく)

見栄晴 撮影/河村正和