『マトリックス』シリーズ『ハリー・ポッター』シリーズの配給を統括し、『るろうに剣心』シリーズ『許されざる者』で製作総指揮を務めたワーナー元社長、ウィリアム・アイアトン。
  2393億円以上の興行収入を叩き出したヒットメーカーが、その半生と映画ビジネスの深淵を綴った著書『日米映画の架け橋 ラストサムライ 2393億円の男』(双葉社)を上梓した。双葉社 THE CHANGEの本連載では、日米のトップスターたちの知られざる素顔や、歴史的メガヒットを生み出したビジネスの熱狂を、彼の生々しい証言とともにひも解いていく。
 第4回は、観客の「どうしても見たい」という興味度を極限まで爆発させる“宣伝の舞台裏”。 現在、米ワーナー・ブラザースによってシリーズ第5作『マトリックス5(仮題)』の開発が進められ、再び世界的な注目を集めている。キアヌ自身も「生みの親であるラナ・ウォシャウスキーからの誘いなら喜んで出演する」と語っており、ネオ役としての復帰や次回作への期待が高まるばかりだ。
 今回は『マトリックス リローデッド』のプロモーションにおいて、配給チームが仕掛けた「東京タワーをマトリックス・グリーンに染め上げる」という常識破りの計画に迫る。数千人のファンがどよめき、キアヌ本人も大興奮した前代未聞のライトアップ。その裏で費やされた巨額のコストと、裏方たちの凄まじい執念を明かす。

六本木ヒルズのジャパンプレミアに登壇した『マトリックス リローデット』制作者と出演者たち。彼らが見守っているのは、背景のスクリーンに映った“東京のシンボル”東京タワーだった。左からキアヌ・リーブス、ひとり置いてヒューゴ・ウィーヴィング、ローレンス・フィッシュバーン、ジェイダ・ピンケット=スミス、プロデューサーのジョエル・シルバー。

ワーナーエンターテイメントジャパン元社長のウィリアム・アイアトン氏。撮影/小島愛子

新作『マトリックス5』始動! キアヌ・リーブス“ネオ復帰”の鍵を握るのは?

 現在、米ワーナー・ブラザース(Warner Bros.)において、シリーズ第5作目となる新作『マトリックス5(仮題)』の製作プロジェクトが公式に進められています。

 ドリュー・ゴダードが監督を務め、シリーズの生みの親であるラナ・ウォシャウスキーが製作総指揮として名を連ねるこのプロジェクトは、早くも世界中で大きな話題となっています。

  ファンが最も注目するキアヌ・リーブスさんの復帰についても、彼自身が「ラナから再び声をかけられるのであれば、喜んでやるよ」と語っているだけに、スクリーンの上で再びネオの姿を見られる日への期待は否応なしに高まります。

 映画を大ヒットさせるためのマーケティングにおいて、最も重要であり、同時に最も難しいのが、そうした人々の「興味度」をいかに最高潮まで高めるかということです。 テレビCMやポスターを大量に投下すれば、映画のタイトルを世間に知らしめる「認知度」を上げることはできます。

 しかし、「ああ、あの映画ね。知っているよ」という認知だけでは、人はわざわざ休日の時間を使い、お金を払って映画館へ足を運んではくれません。

 そこから一歩踏み込んで、「絶対に映画館のスクリーンで見たい」「この熱狂に乗り遅れたくない」と思わせる「興味度」の爆発が必要です。そのためには、単なる宣伝の枠を超え、映画そのものを一つの「巨大な社会イベント」や「お祭り」として世の中に提示し、人々の感情をダイナミックに揺さぶる仕掛けが不可欠なのです。

 そのことを象徴する出来事の一つが、2003年に公開された『マトリックス リローデッド』のジャパンプレミアでした。 前作の『マトリックス』が映像革命を起こして社会現象となっていたため、続編への期待値はすでに高い状態でした。しかし、私たちはそれに甘んじることなく、この作品をさらに上の「伝説」へと押し上げるための、かつてない常識破りのプロモーションを企画しました。