町内会でも有名だった歌声
80年代、アイドル的人気を誇った俳優は、主演作の主題歌を自ら歌うことも多かった。原田さんもご多分に漏れず、デビュー作から主題歌を任されたが、自分が歌手であるという自覚は希薄だったと振り返る。
「あのころは、主演作の主題歌を俳優が歌うのは一般的な流れでした。そして、映画のプロモーションとして歌番組に出演して歌うことが多かったですね。ですから、歌手というより俳優として歌うという意識が強かったかもしれません。
デビュー前、私がまだ長崎にいた頃は、歌番組を家族で楽しみに観るような昭和の時代で、誰もが口ずさめるようなヒット曲がたくさんありました。特に好きだったのは久保田早紀さんでした。歌番組が始まると、姉(俳優・原田貴和子)とテレビの前にカセットデッキを置いて録音したり、覚えた曲を一緒に歌ったりしていました。音楽が日々の暮らしの中にあって、歌うことはとても自然なことでした。
お隣に住む年配のご夫婦に町内会のお掃除などでお会いすると、『お風呂場からふたりの歌声が聴こえてきて、いつも楽しいよ』って。お風呂は自然なエコーがかかるのできっと気持ちよく歌ってたんでしょうね」
仲睦まじい姉妹の様子を思い浮かべると、それはまるで映画の1シーンのよう……。上京した当初は、さぞ心細かったに違いない。
「東京に転校した後も、しっかり毎日通学すると約束していましたから、学業と仕事の両立であまり記憶がないくらいの忙しさでした。
そんな中、来生たかおさん、松任谷由実さん、林哲司さん、大貫妙子さんなど、素晴らしい音楽家の方々が曲を作ってくださって、曲が届くとすぐに長崎にいる姉に電話して、その嬉しさや喜びを共有していました。どう歌ったら良いか相談することもありましたね。
そんな時間が当時の私にとって大きな心の支えになっていたのだと思います。そして、お仕事を通じてたくさんの素敵な出会いにも恵まれました。その全てが積み重なってここまで歩んで来られました」
穏やかな軽やかさを備えた声で、優しくデビュー当時を語ってくれた原田さん。次回は、アーティスト・原田知世が覚醒した、“THE CHANGE”について語っていただくつもりだ。
(つづく)
ヘアメイク:石川ひろ子
スタイリング:青木千加子
衣装
ブローチ各2万6400円、イヤリング1万4300円、リングとして着用可能なピアス1万4300円/すべてNANA WATANABE(ナナワタナベ https://nanawatanabe.com)