ライブ中に涙を流す観客を見たときに感じた思い
小さな音楽スタジオでようやく、周囲が勝手に着せていた「目には見えない原田知世というスーツ」を、静かに脱いだのかもしれない。
「ファンのなかには、慶一さんがプロデュースしてくれた頃の作品が特に好きだとおっしゃる方も結構いらっしゃいます。プロデューサーによって表現する音楽が違うし、私の音楽も変わっていきます。いろんなプロデューサーと、そのときどきの音を鳴らしながら、変化していってもいいのかなと思えるようになりましたし、人や環境が変わることによる化学変化を楽しんでもいるんです」
原田さんは、鈴木慶一さんと組んだ後、90年代後半に当時、世界を席巻していたスウェイディッシュ・ポップスの名プロデューサー、トーレ・ヨハンソンと一緒に作品を作るなど、音楽の新しい旅に出た。サウンドが変化する一方で、聴くだけですっと心が凪ぐような、変わらぬ透明度をたたえたボーカルは変わらず、その歌声で今も心を震わせ癒し続けている。
「今年、アコースティック編成のツアーを行い、久しぶりに歌った曲や10代から今に至るまでの代表曲も多く歌いました。私は昔の曲を歌うとき、できるだけ聴いてくださる人がそれを聴いた当時に旅をしてもらえたらいいなと思っているんです。ライブで曲を聴きながら涙しながら聴いてくださる女性を見たとき、『もしかしたら誰かの心をちょっと支える作品になれていたのかな』と感じて。表現するというのは、ありがたいお仕事だなとつくづく思いましたね」
原田さんの表現は、誰かの心にじわじわと広がり、深い場所にとどまり続けるのだろう。次回は、原田さんの音楽キャリアに欠かせない松任谷由実さんの逸話や、いつまでもピュアな光をまとい続ける原田さんの美と健康の秘訣を深堀したい!
(つづく)
ヘアメイク:石川ひろ子
スタイリング:青木千加子
衣装
ブローチ各2万6400円、イヤリング1万4300円、リングとして着用可能なピアス1万4300円/すべてNANA WATANABE(ナナワタナベ https://nanawatanabe.com)