続いてきたものを次世代にパスする

丸山――「確かに“もっと渇望しろ”とか“もっと汚れろ”なんて言う編集者もいるにはいますけどね。でも僕、衣食住足りた状況で書いたもののほうがいいに決まってると思うんです。貧乏暮らしをしながら書いた文章は、やっぱりしみったれてしまいますから。たとえば、ほら、犯罪者でなくても面白いミステリーは書けるでしょ!?」

宮田「確かにそうですね(笑)!」

丸山「アンダーグラウンドの取材をしつつも、僕がアンダーグラウンドの人にはなっていないのと同じです。濁った色を入れてみて“これは混ざらないな”なんて考えられるような、良いパレットに自身がなる必要はあると思いますが、パレット自体を汚す必要はない。長く書き続けるには、本体にダメージがないほうがいいですから。個人的に思うんですけど、宮田さんには國學院的な感じで書いていってもらいたいです(笑)」

宮田「國學院的! 詳しく伺いたいです!!」

丸山「それこそ、長く作家を続けることこそ國學院的だし。國學院には学者はいっぱいいるけど、万葉集を書いた人はいないわけじゃないですか。でも、それを研究してる人たちがずーっといて、その先に僕らが勉強させてもらってる。だから、続いてきたものを自分に留めるのではなくて、次世代にパスをする。それこそが國學院で学んだ人間の役割のような気がしているんです。なので、宮田さんには強烈に好きなものをどんどん出して広めてほしい」

宮田「それは心していこうかと思います!」

丸山「今回の対談を通して、趣味とか思考、そういうものを全面的に出せるという意味でも國學院って良い場所だったんだなと改めて思いましたね」

宮田「そうですね。あそこには、いい意味で“変な人”がいっぱいいたんだなと再認識しました。みんな隠しているけど……(笑)。でも、それがすごくカッコいい! 私たちもそんな環境が安心できたというか、そんな気はしています。だから、國學院大學の皆さんにも私たちの本をもっと読んでくださると嬉しいなって思います(笑)!」

丸山「まさにその通りですね! 今回はありがとうございました!!」

宮田「ありがとうございました!!」

【完】

宮田愛萌(みやた・まなも)
1998年4月28日生まれ、東京都出身。2023年アイドルグループ卒業時に上梓した『きらきらし』(新潮社)で小説家デビュー。現在は文筆家として小説・エッセイ・短歌などジャンルを問わず活躍。ほか、主な著書に『あやふやで、不確かな』(幻冬舎)、『春、出逢い』(講談社)、『おいしいはやさしい』(PHP研究所)、『わたしのをとめ』(短歌研究社)などがある。また、タレントとして、”本”に関するテーマでテレビ、トークショー、対談などに出演する。

丸山ゴンザレス(まるやま・ごんざれす)
1977年生まれ、宮城県出身。ジャーナリスト、作家、漫画原作者、編集者。國學院大學学術資料センター共同研究員。國學院大學大学院修了後、出版社勤務を経て独立。2005年『アジア『罰当たり』旅行』(彩図社)で作家デビュー。テレビ番組「クレイジージャーニー」(TBS系列)では、世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩く“危険地帯ジャーナリスト”として人気を博す。YouTubeチャンネル「丸山ゴンザレスのディープな世界」はチャンネル登録者数140万人超。近著に『世界の混沌を歩く ダークツーリスト』(講談社)、『世界の危険思想~悪いやつらの頭の中~』(光文社)、『タバコの煙、旅の記憶』(産業編集センター)などがある。

『MASTERゴンザレスのクレイジー考古学 増補改訂版』
丸山ゴンザレス著
本体価格:750円(消費税別)
文庫・288ページ
TBS系列の旅番組『クレイジージャーニー』や、YouTubeチャンネル「丸山ゴンザレスのディープな世界」で大人気の裏社会ジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、その活動の原点とも言える考古学について、自身の半生を振り返りながら持論を展開する異色の旅エッセイ。さらに、これまでの取材を通じて見てきた「裏社会」と、学生時代に修士号を取得した「考古学」を融合させた「ハイブリッド考古学」の実証に挑む。2020年に出た単行本を加筆修正し、イラスト、写真、対談記事を加えた改訂完全版!