小説執筆は「すべての登場人物を自分で演じるということ」
母が他界したのと同じ65歳になって思うのは、
「山村美紗の娘で、良かった」
ということ。
「もし、私の小説を読んで『山村美紗の血を感じる』と思ってくださる方がいらっしゃるとしたら、人生の最大の喜びです」
小説『祇園の秘密 血のすり替え』は、“ミステリーの女王”である母親が文字で紡ぎ出した世界観を女優として表現してきた山村紅葉にしか書けない小説のように感じる。
「女優って、自分はやったことがないことも演じますでしょう? たとえば、人を殺した経験がなくても殺人犯の役をやるし、殺されたことがある人は絶対に役者をやってないわけだけど、想像力で演じますよね。ですから、女優という仕事を通して、自分とは別の人物になりきる特技を得たと思っているんです」
そして、小説を書くという作業は、登場人物になりきるという意味においては女優の役作りと共通点が多かった。
「この人は、こういった家に生まれてこういう仕事に就いて、と設定が決まったら、『じゃあ、こんな風に考えるわね』、『こう行動するに違いない』と勝手にどんどん筆が進んでいくんです。書きながら、役に入っていっちゃう。私にとっての小説執筆は、すべての登場人物を自分で演じるということとイコールでしたね」