1972年のデビュー以来、漫画原作者として膨大な数の作品を手掛け、『ドーベルマン刑事』や『北斗の拳』、『サンクチュアリ』などの大ヒットをものにしてきた武論尊さん。今年4月には、半世紀以上にわたる自身の創作の秘密や哲学を明かした最新刊『悪と嘘を描く 武論尊の漫画原作私論』(小学館)を上梓した。

2024年に私財を投じてさくまんが舎を設立 撮影/有坂政晴

 それにしても、半世紀以上にわたり第一線を走り続ける原動力とは何なのか。口から飛び出したのは、拍子抜けするほど人間臭い「俗っぽい欲」という言葉だった。連載第3回は、スランプ知らずの武論尊さんが明かす、どん底からの独自のリセット法と、規格外の人生を変えた恩人・本宮ひろ志さんとの出会いをお届けする。【第3回/全6回】

「すべてはお金を稼ぐため」半世紀以上第一線を走り続ける巨匠のベースにある、人間臭く「俗っぽい欲」

 再び東京のオフィス。なぜ、武論尊さんは半世紀以上もの間、第一線で膨大な作品を生み出し続けられるのか。創作における崇高な信念を問うと、巨匠らしからぬ人間臭くストレートな答えが返ってきた。

「欲ですよ。売れたい、稼ぎたい。金銭欲に名誉欲、欲がベースになって動いている感じです。崇高なものなんてないし、本当に俗っぽい。そもそも原作という仕事も生活のために始めたので、お金を稼ぐ道具としか考えていませんから」

 この「欲」の重要性は、佐久の漫画塾の生徒たちにも隠すことなく伝えている。欲がなければエネルギーは生まれないからだ。そして、その欲があるからこそ、79歳を迎えた今でも編集部に持ち込みを続け、「塾生と同じ現場に居続けたい」と熱意を燃やすことができるのだという。