『名探偵コナン』青山剛昌も抱えるトップランナーの「不安」。巨匠たちが口を揃える「漫画に正解はない」
あだち充さんに続き、別の日の「武論尊100時間漫画塾」の講義では、青山剛昌さんが『名探偵コナン』を題材に教鞭をとっていた。青山さんはふきだしやコマの使い方、アクションシーンの見せ方などを直筆原稿を交えて実践的に解説し、「読みやすいというのが一番大事。読みにくい漫画はそもそも読んでもらえない」と言い切る。
しかし、青山さんほどの実績を持つトップランナーであっても、自身の漫画の良し悪しについては「自分ではわからない」と語り、講義内容も事前に担当編集者と念入りに固めたことを明かした。これには武論尊さんも深く頷く。
「送り手は自分でいいか悪いかがわかっていないんです。毎回、自分で納得して書いてはいるんだけど、“本当のところはどうなの?”って編集者に聞かないとわからない。50年以上、原作の仕事をしていても、毎回不安になりますよ。そもそも漫画に正解はありませんからね」
「車で2時間かける価値がある」塾生たちが語る現場のリアルと、長野・佐久の地で開くプロへの扉
この圧倒的な「現場のリアル」を無料で享受でき、現役のプロ編集者と直接コミュニケーションが取れる環境こそが、佐久の漫画塾の最大の価値だ。今期で8期目を迎える塾生たちに話を聞くと、その感謝の念は計り知れない。
すでにプロとして活躍しながら「少年漫画を描いてみたい気持ちがあって、ここでもう一度基礎を学び直したい」と語る30代女性や、体調に不安を抱えつつも、卒業生が集まる「裏漫画塾」での交流を通じて「私なりのアプローチでやっていける」と希望を見出す女性。そして、大学卒業のタイミングで就職せずに長野で夢を追う20代男性は、「ジャンプの編集の方の講義がとても実践的だった。車で2時間かける以上の価値が確実にある」と目を輝かせる。
さくまんが舎の代表・清水浩貴さんは「漫画塾のキャッチコピーが“プロへの扉が佐久市で開く”ですから、ここに来ればプロになれるというのを知っていただきたい」と力強く語る。武論尊さんの「塾は永続的に続けたい」という思いは、確かな熱狂となって佐久に根付いている。
つづく