1972年のデビュー以来、漫画原作者として膨大な数の作品を手掛け、『ドーベルマン刑事』や『北斗の拳』、『サンクチュアリ』などの大ヒットをものにしてきた武論尊氏。今年4月には、半世紀以上にわたる自身の創作の秘密や哲学を明かした最新刊『悪と嘘を描く 武論尊の漫画原作私論』(小学館)を上梓した。
読者を惹きつけてやまないスケールの大きな「大風呂敷(嘘)」と、人間臭い「悪役」たち。数々の名作を彩ってきたこれらを生み出す秘訣とは。連載第5回は、名キャラクター誕生の裏側と、巨匠・武論尊さんが今もなお胸に秘める熱き野望、そして自身の振る舞いを見つめ直すきっかけをくれた恩師・ちばあきおさんからの忘れられない教えに迫る。【第5回/全6回】
魅力は正しい主人公より「人間臭い悪役」。『北斗の拳』ラオウやジャギに注ぎ込まれた深いキャラクター愛
インタビューもいよいよ終盤。最新刊のタイトルが示す通り、武論尊作品を特徴づけるのは、魂を揺さぶる「悪」の存在と、スケールの大きな「嘘(大風呂敷)」だ。魅力的な登場人物たちの中でも、特に筆が乗るのは、正しすぎる主人公ではなく、人間臭さや欠点を抱えたキャラクターたちだという。
「悪役のほうが描きやすいし好きですね。主人公ってかっこよくて正しくて、当たり前すぎるじゃないですか。『北斗の拳』ならラオウやジャギです。悪役のほうが、書いていて確実に気持ちが入りますね。『サンクチュアリ』なら、やっぱり人間くさい渡海になります」
自身の中でキャラクターを深く作り込むことで、この男は陳腐なことは言わない、このセリフしか言わないという輪郭が自然と浮かび上がってくるのだという。