2024年1月、ステージ4の下咽頭がんを公表してから2年半が経った見栄晴さん。高校生の時に芸能界入りし、タレント稼業40年超。どうしても声を失いたくなかった見栄晴さんの、がんを乗り越えて得た“THE CHANGE”とは。【第3回/全3回】

見栄晴 撮影/河村正和

 24年の2月に入院しました。抗がん剤を3回、放射線を35回で合計7週間。吐き気や痛みのような副作用は少なかった方だと思うけど、髪はやっぱり抜けました。シャワーを浴びた時、床を見たら毛だらけでね。抗がん剤は悪いものをやっつけてくれるけど、いいものにも影響しちゃうのかなと思いました。

 治療後の体は生まれ変わった新しい自分の体のように感じる。筋肉痛になりやすくなったり、気のせいか髪の毛が濃くなったり。髪に関しては、抜け替わったのかなあと都合よく解釈しています(笑)。

 放射線治療では、当てたところの皮膚が痛くなったりしましたが、それはまだしも味覚がなくなったのは怖かったです。失う怖さより、戻るかどうかが怖い。家族3人で寿司に行って、一口目にマグロを食ったら、味がしなかった。穴子を食べたら、穴子は味がしました。人によって、甘味から味覚がなくなる人もいれば、辛味からなくなる人もいるそうで、僕は塩味からなくなって、最後まで残ったのが甘味でした。

 入院中、体力がないと治るものも治りにくくなるから、体重は落とさないようにと指導を受けるんですけど……いかんせん味覚が無いので食べる事自体がキツイ。でも何かをとにかく食べないと体重や体力が落ちてしまうので、カロリー制限がないのをいいことに院内のコンビニに行って、少しでも味を感じられるケーキや甘いものなどを買って食べていました。「ごはんですよ!」も重宝したなあ。

  今はすっかり元気なんだけど、治療の後遺症はあります。放射線を当てたところが石灰化して動脈硬化の疑いが出たり、夜中にやたら喉が渇くし、喉を使うと声が枯れやすく音域が狭くなって高い声が出なくなった。がんを経験すると、当たり前のことができるって、こんなに幸せかと痛感しますね。あと、がんの怖さは、治療が終わってからも続きます。自分だけはならないと思っていたのに、なったという経験が、「絶対」はないということを心に植え付けるんでしょうね。またなるかもしれないという恐怖と不安が、常に心のどこかにあります。