深く胸に刺さった患者の言葉
今思えば、人生で初めて「治す」という明確な目標を持って突き進んだ時でした。心電図撮ったり、採血したり、CTやMRIを撮ったり。PET検査をやったら大腸にポリープが見つかっちゃうし、放射線治療前には歯科も受診させられました。咽喉周辺に放射線を当てると当たったところはその後、歯の治療ができなくなるためです。そうしたら、虫歯を4本も抜くハメになっちゃった。その他、こまごまとした入院準備もしなくちゃいけない。よくがんと宣告されると頭の中が真っ白になるとか言うけど、そんな暇はありませんでした。タスクがいっぱいで、こんなに忙しいの久しぶりという感じ(笑い)。
耳鼻科、放射線科、消化器科と、3人の先生が「チームで治していきますから」と、とても頼もしかった。僕と真っ直ぐに向き合ってくれる姿に、絶対自分は治ると確信できたし、何よりも心に響いたのはいろんな方からの「頑張れ!」という言葉でしたね。
さまざまな場面で、よく「頑張ってください」と言われてきたけど、僕はそもそも目標を持っていないから、正直何をどう頑張るのかピンと来ていなかったんです。でも、がんになって放射線科のエレベーターから降りた時、年配の方から「見栄晴さんですよね、頑張ってくださいね。一緒に頑張りましょう」と声をかけられた時は……。その方は明らかに僕より年上だし、僕と同じ放射線治療をされていらっしゃる。もしかしたら僕よりももっと大変かもしれない。そんな人から励まされて、こんなに「頑張って」という言葉が心に響く経験は初めてでした。
公表したことで、いろんな方から「頑張って」という手紙やメッセージをたくさんいただきました。すると妻が、「あなたはいい仕事をしてきたんだね」としみじみ言うんです。「普通、こんなにいろんな人から“頑張って”なんて言われないよ」って。仕事をしてきて、妻から初めて褒められた瞬間でした。
(つづく)