好きだったことを取り戻すための三宅流メソッド

 刺激的なネットのコンテンツに慣れてしまった人のみならず、社会人も読書からは遠ざかってしまいがちだ。三宅さん自身が注目を浴びるきっかけになったと感じている『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(2024)はベストセラーとなり、「昔は本が好きだったのに、今は読書のハードルが上がっている」と感じている人たちの多さを示した。

 忙しい毎日の中で、好きなものを見つけたり、かつて好きだったことを取り戻すにはどうしたらいいのだろうか──。幼少期からの本好きとして、文芸評論家として、数多くの本を読んできた三宅さんならではの方法を聞いた。

「没頭するって、没頭を待つ時間が必要なんだなと最近思います。アイドルもメンバーの顔を覚えるまで没頭しきれなかったりするし、読書も最初は作者のテンションに慣れなくても、読んでいるうちに没頭することができる。何でもそうですけど、その作業に“慣れるまで”を待つ時間が必要なんだと思います。でもその待つ時間が取れないと、どうしても好きまで到達できない。だから好きになるためには、待つ時間が必要なんです。

三宅香帆 撮影/三浦龍司

 私、今は幕末がマイブームで、もともと歴史が好きなんですけど、久しぶりにちゃんと勉強したら、学生の頃よりすごく分かるんですよ! 昔は『新選組がかっこいい』みたいな感じで見ていたんですけど、仕事をするようになった今は、『ここのメンツを立てないと、この人怒るよな~』みたいなことまで分かったりする。
 若い頃より歴史の雰囲気がつかめるようになって、それがすごく楽しいんです。自分の中でブームがあると、そこから関心事が広がっていく……世間で流行っていなくてもいい。自分なりのマイブームを作って、掘っていく。それだけでも、毎日は楽しくなるんじゃないかなと思います」

 忙殺されてリフレッシュの時間もない現代人に、三宅さんの言葉は深く染み渡る。同じ目線からの言葉と説得力が、彼女を“時の人”にしたのかもしれない。

■書籍情報
『推したちとどう生きるか』
著:三宅香帆
出版社:新潮社
定価:1034円
電子書籍価格:1034円
発売日:2026/07/17
電子書籍配信開始日:2026/07/17